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行政書士の廃業率を割り出してみた

行政書士廃業率
目次

行政書士は本当に食えないか

「行政書士 廃業率」
「行政書士 食えない」

行政書士というキーワードとセットで検索されることが多いフレーズです。

行政書士の廃業率や「食える、食えない」ということに関して、ネット上にはさまざまな情報が流れていますが、どうにもはっきりした根拠のある情報は少ないような気がします。

自分も今まで、開業を考えている人や開業して間もない先生からこの質問を投げかけられる度に、体感的な「なんとなく」という感じの回答をしていましたし、開業する前は「会社を辞めて行政書士として開業して生活していけるのか。」という心配から、眠れない日々を過ごしていました。

当時はどれだけ調べても、安心というか納得できる結果が見つけられなくて、調べれば調べるほど不安になる情報で溢れており、手探りの状態で開業を決めた覚えがあります。

年末ということで、行政書士試験の合格発表前、かつ、正月休みという時期ですので、行政書士での開業を検討している方々の参考にしていただければと思い記事にしてみました。

また、行政書士登録を抹消された方にはいろいろな事情があるとは思いますが、ここではあえて、登録の抹消・退会の理由を問わず、「廃業」という表現とします。どうかご理解ください。

廃業率を割り出してみる(愛知県)

先程も書いたように、体感的に語られることの多い「行政書士の廃業率」ですが、ある程度リアルな数字を出してみようと思いたちました。

今回は、愛知県の資料が手元にありましたので、それを元に計算していきます。
ただし、開業する地域によって環境もそれぞれあるかと思いますので、あくまでも「愛知県内」ということを念頭に置いてください。

5年後の廃業率を割り出す

行政書士登録日から、約5年後に何%が廃業しているかという設定で考えていきます。

5年という設定にした理由は、開業から5年経営していれば、経営が安定する水準にまで達した方が多いのかな、と考えたからです。
3年だと短く、10年だと長すぎて他の理由での廃業が多くなるだろうと考え、5年にしました。

行政書士の登録者を数える

今回は、令和元年(平成31年)末頃に調査を行ったことから、対象期間を5年前である平成26年度としました。
手元の資料の都合で、平成26年度の中の6ヶ月程度を対象としています。

これは、愛知県行政書士会発行の会報に、登録された先生方のお知らせが掲載されていますので、過去の会報を参考に行政書士登録した人の数を数えました。

この期間内に、登録した先生方の数は、118名でした。

調査日現在、登録していない人数を数える

行政書士登録された118名の方々が、調査日(令和元年末)に行政書士登録をしているかを検索してみました。
調査方法としては、日本行政書士連合会の行政書士検索を利用しました。

その結果、行政書士登録が確認できなかった人の数は、14名

行政書士登録番号を使って調査しましたので、引っ越しや氏名変更、属性変更は追えていると思います。

118名中、104名確認することができました。

ここまでの結果では、

登録が確認できなかった人数(14名) ÷ 対象期間に登録した人数(118名) = 0.118644…

調査対象期間に行政書士登録した全員を対象にした廃業率は、約11.9%でした。

https://www.gyosei.or.jp/members-search/

他士業との兼業者数の調査

さて、ここから地道な作業が始まります。

冒頭でも述べた、「体感的にしか語られない理由」のひとつとして、「他士業との兼業」があると思います。
税理士、司法書士、社労士等とのダブルライセンス、トリプルライセンスで営業されている方が少なくありませんので、

「行政書士だけじゃ食えないよね。」

というワードに発展するわけです。

とはいえ、行政書士の廃業率を知りたい方のほとんどは、「行政書士だけ」で経営できるのか知りたい訳です。

自分も、開業を検討している時期は、なんとなくのイメージだけで、「行政書士だけじゃ食っていくのが難しいから他の資格も取ろうかな。」とか、そんなことばかり考えていました。

行政書士は食えるか

わかりました、分母から抜きましょう!

ここでは可能な限り、「行政書士専業での廃業率」を割り出していきたいので、このポイントにもできる限り切り込んでいこうかと思います。

一般企業との兼業は調べようがないけど士業なら・・・ということでやってみました。

方法としては、下記のとおりです。

対象の先生方の中から、「調査日時点、他士業での登録している人数」を調べました。

それぞれの士業の公式サイトやオンライン名簿にて確認するという方法を取りました。
行政書士の調査で使った登録番号の検索と違って、氏名だけで検索したので、引っ越しや氏名変更など、拾えてない情報もあると思いますのでご容赦ください。

平成26年の対象期間に登録した118名の内、調査日(令和元年末)時点で他士業に登録している先生は31名おられました。

対象期間に登録した人数 118名(他士業との兼業31名、行政書士専業87名)という結果でした。

ちなみに、兼業登録が確認できた各士業の割合は下記の通りです。

登録が確認できた各士業の割合
司法書士    13
税理士     13
社労士     4
弁護士     1
公認会計士   3
中小企業診断士 1

※トリプルライセンスの方もいるので、合計=人数とはなりません。

また、「調査日時点、他士業で登録しているが行政書士登録は確認できない。」という方が3名おられました。
税理士さんや司法書士さんで、行政書士登録したものの行政書士資格を使わなかったという感じだと思います。
この3名を差し引くと、「行政書士専業かつ登録がなくなっている人数」は11名となります。

これらの数字から下記の数字を割り出すことができました。

行政書士専業者 登録約5年後の廃業率

調査日に登録が無い行政書士専業(11名) ÷ 対象期間に登録した行政書士専業者(87名) = 0.126437…

約12.6%

世間で言われているよりも低い数字に感じますね!

冒頭にも述べましたが、体調の問題や家庭の事情によって退会された方や、経営不振以外の理由で他の仕事にシフトされた方、職業として好きになれなかった方、もおみえになると思いますので、皆さんが知りたいであろう、「経営不振による廃業率」はこの数字より、かなり低いと考えられます。

また、

「アルバイトしないと食えない」「家族にささえてもらっている人が多い」等も言われますが、そこはもう調べようがありません。
一般の仕事でもそんなに変わらないような気はします。

ただ、自分が10年間、行政書士事務所を経営してきた感想としては、他の資格の先生方と比べると、やはり行政書士のエンジンは弱いな、不利だな、と感じたことは何度もありました。

まとめ

以上、行政書士の廃業率について、思いついたままに調査してみましたがいかがでしたか?
食えない資格と言われがちな行政書士ですが、思っていたよりも廃業率が低かったな、と感じました。

結論でいうと、行政書士なんてすぐ廃業するだとか、食えない資格だとか、頭ごなしにバカにされるような職業ではないと思います。

そういえば、自分と同時期に登録した先生方や先輩方で廃業されたということはあまり聞いたことがないです。
むしろ、忙しい先生ばかりで、「仕事はいくらでもあるけど処理しきれない。」という言われてる方々も少なくないですよ。

今回は、行政書士の廃業率について書いてみました。
ただし、これはあくまでも数字だけの話で、食えるか食えないかはもちろん個人の能力によるところが大きいことは間違いありません。

行政書士の開業を検討される方の参考資料になればと思います。

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